漢方の話
漢方の基礎知識
漢方の診断法
温故知新
- 春の養生 『春三月、これ発陳と謂う。』黄帝内経素問にはこんな記述があります。
- 続・春の養生
- 夏の養生 『夏三月、此れを蕃秀と謂う。』
- 秋の養生 『秋三月、此れをよ容平と謂う。』
- 冬の養生 『冬三月、これ閉蔵と謂う。』立冬からの3ヶ月間は冬の季節です。
漢方散策
- お月様のお話
- 胃袋を冷やすと腰が痛くなる!?
- 寒邪の話
- 暑邪の話
- 湿邪の話 からだがおもい、だるい・・・これ湿邪の仕業かも!?
- 顔のたるみ 年齢以上に顔がたるんでいる人
- 舌は語る 望診の中の一つに舌診というのがある。
- 春のいろいろ 春はどこ?
- 痛い話 痛みはどうして発生するの?
- ため息 “はぁ〜っ”と、思わず大きなため息ついちゃうことありませんか?
漢方とは
日本では漢方と言うと漢方薬のことと思われる方が多いようですが、漢方とはもともと伝統中国医学(日本では漢方医学と称す)のことを指し、その医学理論体系の中に鍼や灸や湯液(漢方薬)理論が在るわけで、いずれもきちんとした医学理論に則った医療行為になるわけです。
特徴としては、西洋医学が患者の徴候から疾患を特定することを「診断」と呼び、これに基づいた病名に応じて治療を行う「病名治療」に対して、漢方は患者の症状を含めたその患者の状態を証(しょう)と呼び、証によって治療法を選択する為、たとえ同じような病態でも一人一人違った治療穴を選択することになります。
例えば病院で坐骨神経痛だと言われた方でも、寒湿阻滞型や湿熱蘊鬱型などタイプによって全く違った治療となります。
陰陽
古代の人々は、自然界に存在するさまざまな事物や現象を陰陽という二つの相対立する概念で現しました。
例えば天は陽で地は陰。日は陽で月は陰。昼は陽で夜は陰。火は陽で、水は陰など。
また人体についても陰陽で現すことができます。
陽の性質は動に属し、陰の性質は静に属します。
気は陽で血は陰。体は陰で動作は陽。五臓六腑で言えば、陽は六腑、陰は五臓。
このように生理特有の性質と特殊な機能も全て陰陽で説明することができるのです。
病理の面で言えば、表証は陽、裏証は陰。熱証は陽、寒証は陰。機能が衰弱しているのは陽の不足。物質が欠損しているのは陰の不足等等。
人体内部で言えば体に陽の不足が起きれば寒いという現象が現れます。
また体に陰の不足が起きれば体に熱いという現象が起きます。
陰陽とは相対する二つの概念ですが、実はお互いに転化しあい影響しあっています。
人体においては陰陽が調和することが重要です。
以上、陰陽について簡単にご説明いたしました。
経絡
人体には経絡といって気血の流れるルートがあります。
経絡は、たとえて言えば大地に流れる川の流れに似ています。
川はくまなく大地を巡り、田畑を潤し人々の生活を支えます。それはやがて海に注ぎます。太陽の熱により暖められた海水は上昇して雲となり大地に雨を降らせます。やがてそれは再び川の流れとなって大地に流れます。
これらの流れがうまくいかなくなると大地は枯れ木々は育たなくなります。
全身の経絡には、正経十二脈、奇経八脈、十二経別、十二経筋があります。
この中で主なものは正経十二脈と奇経の中の任脈・督脈です。
正経十二脈は六本の陽経、六本の陰経に分かれており次々へと伝わり経絡もくまなく全身を巡り臓腑・頭面・四肢へと巡ります。
経絡は縦にはしるものを経と言い、横に走るものを絡と言って網の目のように全身に分布し、お互いに関連しあっています。
その作用としては内にあっては臓腑と連絡し 外にあっては形体に連絡し 全身に気血を巡らし、陰陽のバランスを調節し、筋骨を潤し、関節を動かせるようにします。
望診
目でからだの全体や局所の様子を観察するのを望診といいます。
具体的には顔色や体の姿勢や体形、目や耳、鼻、皮膚の様子などを見ていきます。
排泄物や分泌物などを見るのも望診に含まれます。
ここで特に重要視しているのは望神と望顔面です。
よく目力があるなどと言われますが、精神が充実しているときは目に光があります。これは正気が充実している証拠です。
反対にくたびれていたりやる気がおこらないと目がどよんとしています。
舌診
東洋医学の体調をみる診方の一つに舌を診るというのがあります。
舌の質や形、動きを見たり舌の上に乗っかっている苔の状態を診ます。
基本的には健康の人の舌は淡紅色をしています。
熱があれば紅(赤色)、冷えがあれば白っぽかったり青っぽかったりします。
また瘀血といって血の流れが悪いと青から紫色になります。
また舌の上に乗っている苔は邪気の様子や胃の働きを示します。
苔が程よい薄さで白っぽいのは健康ですが、苔が厚すぎるものまた苔がまったくないのもよくありません。
苔が白いのはやはり冷えがある証拠の一つです。
また膩苔といって苔がねちゃねちゃしているものは身体に湿があったり食積といって胃腸の調子が悪く食べ物が消化吸収できない状態です。
また身体に熱があると苔は黄色くなったり乾いた状態になったりします。
春の養生
『春三月、これ発陳と謂う。天地倶に生じ、万物以って栄ゆ。』
古医書である黄帝内経素問にはこんな記述があります。
春三月というのは立春から立夏までの間の3ヶ月間のこと・・・。
二十四節気の立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨に相当します。
発陳とは陳(ふる)きを押し出して新しいものを押し出すという意味。
つまり春は陽気が上昇し、気が発散します。自然界では芽吹きの時です。
また二十四節気にもある啓蟄(けいちつ)の意味は虫が這い出してくるという意味です。
植物だけでなく動物も動き始める時期です。
この動くというのが気(陽気)なのです。
(この気があるから万物は動くことができます。従って机だって椅子だって気があったら動くのだよ・・・なんていうのが荘子のどこかに書かれてましたっけ。)
しかし、この陽気が昇りすぎるとのぼせやめまいなどの症状が起こりやすくなってしまうのです。
さて、春は肝が旺気する(活発になる)季節です。この肝の働きが活発になるというのは自然界で言うところの芽が出るということと同じことなのです。
ですからこの働きがうまくいかないと様々な症状に悩まされることとなります。
まず、肝には疏泄というはたらきがあって気を上昇させるという働きがあります。この働きがうまくいかなくなるとどうなるのでしょう?
気の巡りが悪くなる、つまり気が滞って(気滞)つまる(鬱結)という状態になります。
このような状態になるとイライラと落ち着かない、なんとなく胸苦しい、はぁ~とため息が出るという状態になります。
また、肝の陽気が昇りすぎるとめまいや、耳鳴り、目が赤くなる、良く眠れないなどの症状が発生します。
このような症状がこの時期でやすい方は肝の働きを整え気の巡りをよくてあげることが大切です。
ただしここでいう肝の働きは漢方医学で言うところの肝の働きであり肝臓の実質そのものを指しているわけではありません。
続・春の養生
まず春になったばかりの立春には陽気が芽生えたばかり。
陽気を損なわないように、身体を冷やさないようにすることが大事です。
気は冷えると巡りが悪くなるのです。
しかし、暖かくするのは何もたくさんの衣服を着込むというばかりではありません。
良く身体を動かし歩くというのも大切です。
啓蟄を過ぎてどんどん暖かくなると服装も一枚、また一枚と薄くなってきます。
しかしここでも注意が必要です。
この時期は三寒四温という言葉が現わすように暖かかったり寒かったりと気温の変化が激しくなります。
脱いだり着たりの体温調節を上手にしないと思わぬところで身体を冷やすことになってしまいます。
さあ、芽もだいぶ出てきました水や栄養が必要です。
実は漢方でいうところの肝の働きにはもう一つ血を蔵するという働きがあります。
人間の身体の中の栄養は最終的には血となります。ですから人間の身体の中の陽気がめぐるためにはこの血がしっかりしていることが大切なのです。
またこの血は気の陽に対して陰といいます。
実は身体の中はさまざまな陰陽でうまくバランスを取るようにできています。
このバランスが崩れた時にいろいろな症状が発生します。
また肝の陰が不足するとめまいや耳鳴りに加えて口が渇いて咽が痛くる、手足がぴくぴくするなどの症状が起こりやすくなります。
ですからこの気の巡りをよくするだけでなく陰血を補ってあげることも必要です。
鍼治療の本来の目的は季節に合わせて五臓を調整することです。
最後に先ほどの古医書の続きにはこう記されています。
『夜に臥し早く起き、広く庭を歩み、髪を被き形を緩うし、以て志をして生ぜしむ。生かして殺す勿れ、予えて奪う勿れ、賞して罰する勿れ。此れ春気の応、養生の道なり。これに逆らえば則ち肝を傷り、夏に寒変をなし長に奉ずる者少なし。』
夏の養生
『夏三月、これ蕃秀と謂う。天地の気交わり、万物華さき実る。』
夏の三月というのは立夏から立秋前日までの間の3ヶ月間のことで、二十四節気の立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑に相当します。
蕃とは茂(しげること)であり、盛んであるということ。秀は華であり美であるとのこと。つまり繁り栄えて美しいという意味です。
天の気は下降し地の気は上昇して天の気と地の気が交わりあうと万物の動きも活発になります。
若葉が生い茂りぐんぐん成長していきます。緑の色もどんどん濃くなります。そして様々な花が咲きます。
『夜に臥し早く起き、日を厭う勿れ。志をして怒ることなからしめ、華英をして成秀せしめ、気をして泄らすを得さしめ、愛する所をして外に在るが若くせしむ。』
夏至に向かって日照時間もどんどん延びていきます。
このような時期は人間も活動的になります。睡眠の深さも時間も冬ほど必要なくなります。
少し遅く寝て早起きしても身体がもつ時期です。
暑くなってきて体の陽気がうまく体外へ発散できないと、体内に熱がこもりやすくなります。
こうなると身体になんとなく熱がこもったようになり、身体がだるくなります。
人によっては気持ちがなんとなく落ち着かなくなったり眠れなくなったり、胸が苦しくなったりといった症状が出ることもあります。
夏の野菜は身体の熱を下げてくれます。
どんどん食べるとからだの血脈がきれいになります。
活動的になる時期なので身体を軽く動かしてストレス発散させます。
気持ちを愉快にすることが大切です。
このようにすると身体の中の陽気を外に向かってうまく発散することができます。
『此れ夏気の応、養長の道なり。』このようにすることが夏の養生となります。
秋の養生
『秋三月、此れを容平と謂う。天気は急を以ってし、地気は明を以ってす。』
秋三月とは立秋から立冬までの3ヶ月間です。
秋は収穫の季節です。夏に成長した万物は花が実を結びその姿が定まります。これを容平といいます。
秋の気候の変化は急です。また地上では葉が紅葉して色を変えます。
秋の気の特徴を粛殺といいます。これはつまり秋の気候は草木を枯れさせ、実は地面に落ち中の種は地中へともぐります。
この種が季節を経てまた再び芽を出すことができるかどうか、自然淘汰されるかどうか・・・。
人体の陽気も収斂の作用により身体の体表から奥へと入っていきます。
秋は五臓のうち肺の機能が盛んになる時期と東洋医学では考えます。肺は潤うこと(滋潤)を好んで乾燥を嫌います。
秋になって乾燥してくると咳や、喘息、胸の痛みなどが起こりやすくなってきます。
身体を潤わす食材をいただきます。
早寝早起きをして心を安らかに静かにさせ、肺気を清浄に保持することが養生の道であると古典では説いています。
冬の養生
『冬三月、これ閉蔵と謂う。水冰(こお)り地坼(さ)く。陽を擾(みだ)すことなかれ。』
古医書である黄帝内経素問にはこんな記述があります。
立冬から立春までの3ヶ月間は冬の季節です。
この時期、陽気はからだの奥深くにあります。これが閉蔵です。
はり治療ではすばやく深く無痛で刺す必要があります。
このようにしないと陽気を損なってしまうからです。(ここに技術が必要となります。)
古典では『寒を去りて温に就き、皮膚を泄らして、気をしてしばしば奪せしむることなかれ』とあります。
厳寒を避け、暖かくするとの意です。
寒くてもからだを動かすとぽかぽかと温まります。ただし汗をかいたらすばやく着替えをし冷やさないように気をつけます。
汗をかいてそのままにしておくとせっかくからだの奥にある陽気が外に出てしまい容易にかぜを引きやすくなるからです。
また生ものや冷たいもの夏野菜などからだを冷やすものを食べないようにしからだを温める食べ物を積極的にとります。
必ず火を通していただくようにします。
からだを温める食べ物としては葱や生姜をはじめとしてにんにく・胡椒・グローブ・黒砂糖・酢・酒・とり肉・羊肉・くるみ・もち米・えびなどです。
または漢方では冬は腎と関係が深いと考えていますのでこの時期は補腎を心がけるといいです。
腎を補う作用のある食べ物は、豆類や黒ゴマ、山芋、豚肉、くり、桑の実、枸杞子、牡蠣などです。
お月様のお話
鍼灸の古医書である霊枢の中にこんなお話があります。
「人と自然界は密接な関係にあって日月の運行に対応しています。
月が満ちてるときは海水は西に盛んになりそれに応じて人の血気も滑らかに流れ、盛んに体表を潤すので肌肉は充実して皮膚は緻密になり毛髪は強靭になり、そう理は閉じ合わさり、皮脂が多いので、表が堅固になります。
このときに賊風の侵入を受けても浅い部位に侵入するだけで深くはありません。
月が欠けてくると海水は東に盛んになり、それに応じて人の既決も虚し、体表の衛気もt減少するので、外見は平常どおりでも、その肌肉は痩せ、皮膚は弛緩し、そう理は開き、毛髪は折れ、皮膚の筋目も粗く薄く、皮脂も剥落します。
このときに、もし賊風の侵襲に遭えば、邪気は深く裏に侵入しますので、発病も急激になるのです。」
寒邪の話
寒は冬の主気です。
寒は陰邪で凝滞・収引の性質があります。
陰邪というのは陽気を損傷させやすいと言うことです。
また、凝滞・収引というのは、凝結して滞らせ、収縮させ引きつらせるの意味で気血津液の運行を阻害し、経絡の流れを滞らせ、関節、からだの動きを悪くします。
従って寒邪に侵されるとからだに激しい痛みが起こったり、関節が伸びなくなったり曲がらなくなったり、ひどい時は麻痺や感覚異常が起こります。
冬になると普段元気な人でもちょっとした不注意でこれらの症状を引き起こすことがあります。
さらにもともとからだが冷えやすい陽気不足の人にとってはつらい季節となります。陽気不足の人は寒邪を感受しやすいからです。
この季節はなるべく防寒につとめからだを温めるよう心がけることが大切です。
治療では阻滞した経絡の流れを調え、気血の流れを回復させることによりからだが温まるようになります。
暑邪の話
暑邪は夏の主気です。
漢方や鍼灸医学の古典である素問の五運行大論に「天にありては熱となり、地にありては火となる・・・その性は暑である」とあります。
また熱論に「まず夏至の日に先立つものを温を病むとなし、夏至の日に後るるものを暑を病むとなす」とあります。
このように夏の熱邪を暑病といいます。
真夏の炎天下で仕事をしたり、暑い室内にいて発生するのが暑熱の邪によるものです。
これは現代の熱中症ですね。
暑さに負けると熱が出て咽が渇きます。さらに大量に汗をかくためからだの水分が不足します。
水分を補給しない状況が続きさらに症状が悪化すると意識が低下したり危険な状態になります。
暑いときはこまめな水分補給と塩分補給が大切です。
また暑いと気が消耗しますので呼吸がみじかくなったり力が入らない、しゃべるのが億劫などの症状も現れます。
食欲が低下するとさらに気を消耗することになります。
暑は多くは湿を伴うので暑くて湿度が高くなると発熱や落ちつかなくて咽が渇くのと同時に手足が重い、胸苦しい、気持が悪い、便がべたべたしてすっきりしないなどの症状を伴います。
湿邪の話
湿邪は長夏の主気です。
長夏というのは芒種の後十日から処暑の後七日の72.05日間のことをさします。
この時期はちょうど梅雨時にあたり、一年でもっとも湿気の高い時期といえます。
またこの季節以外にも、いつまでも長雨が続いたり、湿った土地で生活していたり、水の上での作業や雨の中を歩く、汗をかいたままで着替えをしないなどでも湿邪に罹患することがあります。
もともと脾臓の働きが弱い人は、身体の中に余分な湿気がたまりやすく、内在的な原因となります。
湿邪の性質は重濁・粘滯です。
湿邪に身体が侵されると、まるで重いものを持ったように身体が重くなったり、頭がはっきりしないなどの症状がでます。
粘滯というのは粘膩(ねばねばべとべと)と停滞、阻滞の意味です。
慢性疾患や良くなったり悪くなったりを繰り返すような治りにくい病も、湿邪と関係しています。
湿邪が身体のどこに留まっているかによって、異なる症状がでてきます。
湿邪が上の方に留まれば頭が重い、鼻塞などの症状が現れますし、下の方にある場合は足のむくみ、滞下などが起こります。
また胃腸に留まると、胃がすっきりしない・胸苦しいくて吐き気がする・大便がべとべとしてすっきりしないなどの症状が現れます。
膝などの関節や、身体の一定の部位がおもだるく、痛んだりうずいたりすることなども湿邪の症状です。
治療では経絡を調整することにより余分な湿邪の停滞を取り除き、脾臓など関連する五臓の働きをよくするようにします。
顔のたるみ
人と物の違いはなんでしょう?
人や動物は動くことができるのに机やイスが動くことができないのは何故でしょう?
さて、難しい問題です。
答えはひとによっていろいろでしょう。
中国哲学では気があるからと考えます。
つまり机やイスも気があれば動くことができる、人や動物も気がなくなれば動くことができず死となるのです。
この気には様々な働きがありますが、物を持ち上げる、保持するというのもその働きの一つです。
つまり身体の中の内臓などそれぞれ正しい位置にあるのはこの気の持ち上げる、保持するという働きによるものなのです。
もしこの気のはたらきが弱くなると内臓下垂(胃下垂や子宮脱など)やヘルニアなどが起こります。
この気の持ち上げる保持するという働きは身体の内部だけでなく体の外部、皮膚や筋肉などにも作用します。顔のたるみはこの気の働きが弱くなり顔の皮膚や筋肉を正しい位置に保持できなくなった結果なのです。
誰だって若いときは顔のたるみもしわも気にならないですよね。
このたるみがとし相応であればいいのですが、必要以上にたるんでいる方を見かけます。
特に30代後半から40代にかけては個人差が大きくなってきます。
はりで五臓六腑を回復させ気の働きがよくなると皮膚に張りや艶が戻ります。
この効果は30代後半から40代の方を治療していると顕著に変化します。(それより前の年齢の方はまだ無理が効きますので頑張ってもそれほど気を消耗することはありません。50代後半以上の方の場合の効果はゆっくりあらわれます。)
むくんで垂れている感じの方など本当に顔が締まって一回り小さくなった印象です。
年齢以上に顔がたるんでいる方、身体の注意信号ですよ!
舌は語る
漢方の診断法の一つに望診というのがある。
“望んでこれを見る”つまり目で見て患者さんの状態を判断する(顔や皮膚の色艶など)診断法の一つだ。
この望診の中の一つに舌診というのがある。
つまり舌の様子を見て患者さんの今の健康状態を判断するのである。
舌を見るなんて日常生活の中ではあまりないことだと思うが、実は様々なことを我々に語ってくれるのである。
くたびれてなんとなく力が入らない、だるいなんていう人がいる。一見若くて元気そうな女性だ。でもそんな人の舌を拝見するとへらへらしている。俗に私がへらへら舌とよんでいるやつだ。(へらへら舌は正式な名称でないのであしからず・・・)
冷えている人の舌苔は白い。
湿気に負けている人は膩苔といってねちゃねちゃした感じになっている。
我々の身体は自然界の影響を少なからず受けているので梅雨の時期など何日も雨が降りが続くと膩苔の人が増える等等・・・。
もちろん慢性疾患になると状態が複雑になるので症状と一致しない場合も多くそれですべてを診断しているわけではない。しかし大いに参考になる所見の一つだ。
しゃべらなくても舌は我々にいろいろ語りかけているのである。
春のいろいろ
皆さんは春というといつだと思いますか?
現代を生きる私たちの感覚だと昼間大分暖かくなってきてから・・・桜が咲く頃でしょうか・・・?
旧暦が使われていた頃には春の始まりは多くは立春からでした。
しかし中国では前漢の時代より前には冬至を春の始まりとする考え方がありました。
中国の古典である淮南子にはこうあります。
「夏の日至には、則ち陰、陽に乗ず、是を以って万物就いて死す。
冬の日至には、則ち陽、陰に乗ず、是を以って万物仰いで生す。
昼は陽の分、夜は陰の分、是を以って、陽気勝てば、則ち日長くして夜短く、陰気勝てば、則ち日短くして夜長し。」
春夏の陽気が夏至に至って極まり、再び陰気がきざしはじめます。そうすると万物は成長をやめ種を残し枯れていきます。
逆に冬至に至って陰気が極まると 陽気がきざし始めます。陽気が動き始めると地中に落ちた種は少しずつ根が少しずつ伸び始めます。
これはつまり一日の日照時間をもとに考えると夏至は一年でもっとも昼が長く夜が短い日であり、冬至は昼の長さが一年で最も短いときであり夜が最も長い。陰気が極まって、これから陽気が萌すという、陰から陽への一陽来復の日だというわけで、冬至から春が始まると考えたわけです。
では立春の春は?
大寒の後に立春があるわけですが、このころが一年で最も寒い時期となります。
つまり気温の関係で考えると立春から少しずつ暖かくなっていくわけです。
でも昼間がぽかぽかして春だな〜と感じられるのは春分のころでしょうか・・・。
このように一口に春といっても様々な春があるわけです。
痛い話
坐骨神経痛・腰痛・肩の痛み・膝関節症・偏頭痛・リウマチ・女性であれば生理痛など痛みにいろいろありますが痛みはどうして発生するのでしょう?
不通則痛
通じなければ痛む。つまり経絡が閉塞すると痛みが発生するのです。これは実証の痛みです。
不栄則痛
栄せざれば痛む。これは気血の不足や陰精の消耗により経絡や臓腑にエネルギーが不足して発生する痛みで主に虚証の痛みです。
痛みは身体が伝えるメッセージです。
鎮痛剤や痛いところに針を打ってただ痛みを止めるのではなく、その痛みを引き起こしている根本的な原因を取り除くのが漢方はりの治療です。
胃袋を冷やすと腰が痛くなる!?
冷たいもののとり過ぎには注意してくださいね。
夏になるといつも皆さんにお願いしています。
暑いとついアイスとか、カキ氷とか、生ビールとかおいしいですね。
気持ち分かります。
でもね、あまり冷たいものばかり取りすぎると胃袋が冷えてしまいます。
お腹のところに手を当てると結構冷えている人、多いんです。
実は冷えるのは胃袋だけじゃないんです。内臓全体が冷えてしまいます。
内臓の後ろには腰の曲げ伸ばしに関係する筋肉があります。
冷えると筋肉は硬くなり動きが悪くなります。
これは東洋医学でいうところの土克水の関係です。
東洋医学では、腰は腎と関係しています。
腎と脾胃の関係を五行で考えると脾胃は土、腎は水です。
冷たいものをとりすぎて胃袋をいじめると土克水という関係で腰に影響します。
東洋医学では身体全体のバランスが大事と考えています。
皆さん、冷たいものの食べすぎには注意してくださいね。
ため息
“はぁ〜っ”と、思わず大きなため息ついちゃうことありませんか?
こんな時は、気が滞っているのです。
胸にたまった気をなんとか巡らそうとしている生体反応の一種です。
息を吐くと少し楽になる・・・。
でも、これストレスが溜まっているサインです。
こんなとき、漢方では気鬱といって肝の疏泄(そせつ)という働きがうまくいっていないのが主な原因です。
もちろんストレスの原因となっているものを取り除くのが一番ですが、疏肝(そかん)と言って肝の働きをよくしてあげると楽になります。
太一堂鍼灸院で施術を行うのは、法律に基づく国家資格を有し、
高い技術力を持った、経験年数20年以上のベテラン鍼灸師のみです。